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2019-01-19 役員退職給与の「不相当に高額な部分の金額」

2019-01-19 役員退職給与の「不相当に高額な部分の金額」



N 0.306 @Jan' 19

役員退職給与の「不相当に高額な部分の金額J

平均功績倍率法の合理性

法人税法上、役員退職給与は、法人の就業規則等に定められた規定により算定された額であっても、そのうち「不相当に高額な部分の金額Jは損金の額に算入されません (法法34②、法令70二)。
そして、その役員退職給与の相当額の算定方法としては、平均功績倍率法、1年当たり平均額法、最高功紛倍率法等が採用されています。今回は、平均功績倍率法の合理性等が争われた判決をご紹介します。(平成30年4月25日東京高裁・原判決一部取消し(請求棄却1) 、附帯控訴棄却・TAINSコード:Z888-2177)

事案の概要

この事案は、ミシン部品の製造販売業等を営むB社が、同社を死亡退職した元代表取締役Aへ支給した退職慰労金(本件役員退職給与) 4億2000万円を償金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、三条税務署長が、本件役員退職給与の額のうち2億0875万2000円は「不相当に高瀬な部分の金額」であるから損金の額に算入されないとして、更正処分等をしたことから、争われたものです。

原審(平成29年10月13日東京地裁、Z888-2145)は、平均功績倍率の3. 26にその半数を加えた4.89にAの最終月額報酬額240万円及び勤続年数27年をそれぞれ乗じて計算される金額に相当する3億1687万2000円までの部分は退職給与を超えるものではなく、本件役員退職給与の額のうち「不相当に高額な部分の金額」は1億031 2万8000円であると判断して、更正処分等の一部を取り消しました。それを不服として、被訴人(国)は控訴し、被控訴人(B社)は、請求が一部認められなかった部分を不服として附帯控訴しました。

裁判所の判断

東京高裁では、次のとおり判断し、B社の請求を一部認容した原判決を取り消して請求を棄却しました。
① 控訴人は、本件役員退職給与のうち相当であると認められる金額の算定方法として、平均功績倍率法を用いている。各算定要素(最終月額報酬額、勤続年数、平均功績倍率)を用いて役員退職給与の相当額を算定しようとする平均功績倍率法は、その同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り、Aに対する退職給与相当額を算定する方法として、法人税法34条2項及び法人税法施行令70条2号の趣旨に最も合致する合理的な方法というべきである。
② B社の同業類似法人の抽出基準(B社の本店所在地と経済事情が類似するC内に納税地がある法人で、日本標準産業分類の大分類「E-製造業」の中分類「24-金属製品製造業」を基幹事業としていること、一定期間内の売上金額がB社の半額以上倍額以下であること、代表取締役に死亡退職金の支払があること、不服申立て又は訴訟が継続中でないこと)は、いずれも合理的である。抽出基準に該当するB社の同業類似法人5法人の支給した役員退職給与に係る功績倍率等は、4.31、3.75、3.09、3.00、2. 13であり、その平均功績倍率(本件平均功絞倍率)は、3.26であると認められる。
③ 本件平均功績倍率は、B社の同業類似法人の抽出を合理的に行った上で、法人税法34条2項及び法人税法施行令70条2号の趣旨に最も合致する合理的な方法で算定されたものであるから、Aの最終月額報酬額(240万円)に同人の勤続年数(27年)及び本件平均功績倍率(3. 26) を乗じた金額である2億11 24万8000円はAに対する退職給与として相当であると認められる金鎖である。
③ Aは、B社の経理及び労務管理を担当して約8億円の債務完済に何らかの貢献をしたことが認められるが、これに関するAの具体的貢献の態様及び程度は必ずしも明らかではなく、同業類似法人の合理的な抽出結果に基づく本件平均功績倍率によってもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとは言い難いほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められない。
⑤ したがって、本件役員退職給与の額のうち「不相当に高額な部分の金額」は、2億0875万2000円となる。



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