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2019-03-16 役員が有利な価額で取得した非上場株式

2019-03-16 役員が有利な価額で取得した非上場株式


時価と払込金額との差額を賞与と認定

今回は、関与税理士の助言に基づき実行した株式移転について、株式の時価をめぐって争われた事例(平成30年3月1日非公開裁決・棄却・FO-1-889)

く事案の概要〉

A社(建築工事請負業)の代表取締役である請求人の父乙は、平成24年初め頃、A社株式を所有していなかった請求人甲に、取締役営業部長として営業実績もあったことからA社株式を所有させることを考え、顧問税理士に相談したところ、1株当たりの対価を1500円とし、まず、乙がA社に同社株式を譲渡し、その後、A社が請求人にこれを譲渡する方法を採るよう助言を受け、株式移転を実行しました。

本件は、請求人が、A社の非上場株式の移転を受けたことについて、原処分庁が、株式の移転は時価よりも低い払込金額でなされたものであり、株式の時価と払込金額との差額につき賞与の支払を受けたものであるとして所得税の更正処分をした事案です。

く国税不服審判所の判断>

審判所は、次のように判断して、請求人の処分取消しの請求を棄却しました。
① A社株式は、非上場株式であり、気配相場はなく、株式公開の途上にもないところ、類似法人比準方式により評価する上で適正な類似法人の株式の価額は認められない。したがって、A社株式の時価は、所得税基本通達59-6の定める条件に準じた修正を加えた上で、評価通達の定める非上場株式の評価方法にのっとって算定された価額によるべきである。

②株式移転により、請求人は、評価通達188の(2) に定める「中心的な同族株主」に該当することになるため、所得税基本通達59-6の(2) に準じて、A社は、評価通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によるべきである。そうすると、A社株式の評価額は○○円となる。

③ 請求人は、株式移転により、1株当たりの評価額が○○円のA社株式を、1500円の払込みにより取得したところ、これは、A社株式を低い対価で取得したものであるから、A社株式の時価と払込金額との差額に相当する経済的利益を享受したものと認められる。そうすると、更正処分は当該価額を○○円と算定していることから、当該価額を過大に認定した違法はないというべきである。

④請求人は、A社の自己株式の処分は出資の受入れで、あって、資産の譲渡とは異なるから、株式を取得した者に原則として経済的利益は生じない旨主張する。しかしながら、自己株式の処分が、株式の譲渡であることと矛盾するものではなく、当該自己株式を有利な払込金額で取得した場合には、経済的利益が生じると解することに支障はない。

⑤請求人は、株式移転につき、請求人の所得となる権利の取得又は経済的利益の享受があったと認められる場合に、株式移転は無効である旨主張する。しかしながら、請求人は、A社株式に係る株主として、株主総会に出席しその権利を行使するとともに、配当金を受領しているところ、これまでに、当該配当金を返還した事実はないため、株式移転により請求人が取得した経済的成果は失われていない。したがって、株式移転が私法上無効であるか否かについて検討するまでもなく、これによる請求人の所得が遡及的に消滅したと認める余地はない。



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