さまざまな分野の税と会計の問題についてのご相談承ります。

2020-05-20 みなし譲渡/取引相場のない株式の時価

2020-05-20 みなし譲渡/取引相場のない株式の時価


みなし譲渡/取引相場のない株式の時価

配当還元方式か類似業種比準方式か

取引相場のない株式の譲渡所得の計算に当たり、平成29年8月30日東京地裁では、譲渡前の議決権割合により、類似業種比準方式で評価すべきであると判断され(納税者の請求棄却)、平成30年7月19日東京高裁では、議渡後の議決権割合により、配当還元方式で評価すべきであると判断されました(納税者勝訴) (第304号で紹介)。最高裁では、国の敗訴部分を破棄し、高裁に差し戻しました。(令和2年3月24日最高裁・上告人敗訴部分破棄・差戻し・TAINSコードー2888-2296)

事案の概要

法人に対する株式の譲渡につき、被上告人らが、当該譲渡に係る譲渡所得の収入金額を譲渡代金額と同額として所得税の申告をしたところ、当該代金額が所得税法59条1項2号に定める著しく低い価額の対価に当たるとして、更正処分等を受けた事案であり、当該株式の譲渡の時における価額が争われています。最高裁は、次のとおり、原審の判断は是認することができないとして、上告人(国)の敗訴部分を破棄し、高裁に差し戻しました。

裁判所の判断

1 所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき、所得税基本通達59-6は、譲渡所得の基因となった資産が取引相場のない株式である場合には、同通達59 - 6の (1)~(4) によることを条件に評価通達の例により算定した価額とする旨を定める。

評価通達は、相続税及び贈与税の課税における財産の評価に関するものであるところ、取引相場のない株式の評価方法について、原則的な評価方法を定める一方、事業経営への影響の少ない同族株主の一部や従業員株主等においては、会社への支配カが乏しく、単に配当を期待するにとどまるという実情があることから、評価手続の簡便性をも考臆して、このような少数株主が取得した株式については、例外的に配当還元方式によるものとする。

そして、評価通達は、株式を取得した株主の議決権の割合により配当還元方式を用いるか否かを判定するものとするが、これは、相続税や贈与税は、相続等により財産を取得した者に対し、取得した財産の価額を課税価格として課されるものであることから、抹式を取得した抹主の会社への支配力に着目したものということができる。

2 これに対し、本件のような株式の議渡に係る議渡所得に対する課税においては、譲受人の会社への支配力の程度は、譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼすものではないのであって、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきものと解される。

3 譲渡所得に対する課税の場面においては、相続税や贈与税の課税の場面を前提とする評価通達の定めをそのまま用いることはできず、所得税法の趣旨に則し、その差異に応じた取扱いがされるべきである。

所得税基本通達59-6は、取引相場のない株式の評価につき、少数株主に該当するか否かの判断の前提となる「同族株主」に該当するかどうかは妹式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること等を条件に、評価通達の例により算定した価額とする旨を定めているところ、この定めは、上記のとおり、譲渡所得に対する課税と相続税等との性質の差異に応じた取扱いをすることとし、少数株主に該当するか否かについても当該株式を譲渡した株主について判断すべきことをいう趣旨のものということができる。

4 ところが、原審は、本件株式の譲受人であるCが評価通達188の(3) の少数株主に該当することを理由として、本件株式につき配当還元方式により算定した額が本件株式譲渡の時における価額であるとしたものであり、この原審の判断には、所得税法59条l項の解釈適用を誤った違法がある。



戻る

JUSTAX第322号(令和2年5月10日号)/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部

powered by QHM 6.0.2 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional