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2020-11-20 裁判の確定によりした更正の請求

2020-11-20 裁判の確定によりした更正の請求

過払金返還債権の確定により過年度の決算を修正する処理
破産会社の破産管財人がした更正の請求


消費者金融業を営む法人が、顧客からの制限利率を超えた利息分の過払金返還請求権の行使を受けて、破産に及んだ例が何件かあります。その過払金返還請求権に係る破産債権が確定したことにより、前期修正損の計上ではなく、過年度の決算を修正する更正の請求をした事例のうち、地裁で請求棄却、高裁で逆転して請求認容、最高裁で再度逆転して地裁判決を正当と判断した事例を紹介します。(令和2年7月2日最高裁・原判決破棄、被上告人の控訴棄却・TAINSコードZ888-2307)

事案の概要

株式会社クラヴィスの破産管財人である被上告人が、過年度において支払を受けた制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が、その後の破産手続において確定したことにより、これに対応する各事業年度の益金の額を減額して計算すると納付すべき法人税の額が過大となったとして、各事業年度の法人税につき更正の請求をした事案です。
主位的には更正をすべき理由がない旨の通知処分の一部の取消しを、予備的には制限超過利息等に対応する法人税相当額の一部についての不当利得返還等を求めました。

最高裁判所の判断

1
原審は、本件各更正の請求は国税通目1)法23条2項1号及び同条1項1号の各要件を満たすとして、主位的請求を認容した。しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。

2
企業会計原則は、過去の損益計算を修正する必要が生じても、過去の財務諸表を修正することなく、要修正額を前期損益修正として当期の特別損益項目に計上する方法を用いることを定め、企業会計基準も、誤謬が発見された場合に行う会計処理としては、誤謬に基づく過去の財務諸表の修正再表示の累積的影響額を当期の期首の残高に反映するにとどめることとしている。これらの定めは、損益計算が法人の継続的な経済活動を人為的に区切った期間を単位として行われるべきものであることを前提としており、過去の煩益計算を遡って修正することを予定していないものと解される。

3
法人税法は、事業年度ごとに区切って収益等の額の計算を行うことの例外として、欠損金の繰越し及び欠損金の繰戻し還付等の制度を設け、解散法人については、残余財産がないと見込まれる場合における期限切れ欠損金相当額の損金算入等の制度を設けている。

このような特別の規定が、破産者である法人についても適用されることを前提とし、具体的な要件と手続を詳細に定めていることからすれば、同法は、破産者である法人であっても、特別に定められた要件と手続の下においてのみ事業年度を超えた課税関係の調整を行うことを原則としているものと解される。

4
同法及びその関係法令においては、法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし、その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合に前期損益修正と異なる取扱いを許容する特別の規定は見当たらず、また、企業会計上も、上記の場合に過年度の収益を減額させる計算をすることが公正妥当な会計慣行として確立していることはうかがわれないことからすると、法人税法が上記の場合について上記原則に対する例外を許容しているものと解することはできない。

5
原判決は破棄を免れない。第1審判決は正当であるから、被上告人の佳訴を棄却すべきである。(税法データベース編集室大高由美子)

JUSTAX第328号(令和2年11月10日号}/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部


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