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2021-04-21 仕入れ税額控除の可否 給与か外注費か

2021-04-21 仕入れ税額控除の可否 給与か外注費か

仕入税額控除の可否/給与か外注費か
従業員から外注先に変更になった作業員に支払った報酬
「給与」と「外注費」の区分は形式上と実質上を総合的に勘案して判断されることになりますが、この判断はとても難しく、争いも多いと恩います。今回は、最新の東京地裁判決をご紹介します。
(令和3年2月26日東京地裁・棄却・TAINSコードZ888-2352)

事案の概要

塗装工事業等を営む原告A社は、従業員に対し、平成27年4月から健康保険等に加入し、給与から保険料を徴収する旨説明したところ、従業員2名から、給与が減額されるのは困るとの申出があったため、その2名を「外注先」として取り扱うこととしました。本件は、A社が、作業員2名に支払った報酬(本件支出金)を課税仕入れとしてこれに係る消費税額を仕入税額控除に計上して消費税等の申告をしたところ、税務署長から、当該報酬は作業員にとって給与所得であるから課税仕入れに当たらないとして、更正処分等を受けた事案です。

裁判所の判断

東京地裁は、本件支出金は「給与等」に該当するから、消費税法2条1項12号にいう「課税仕入れ」に当たらず、仕入税額控除の対象とならないとして、その理由を次のように判示しました。
1
給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいい、取り分け、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない(最高裁昭和56年4月24日判決参照)。

2
具体的には、消基通1ー1ー1に定める事項 (①非代替性、②指揮監督性、③危険負但、④材料等の支給)を総合勘案して判定する。これは、課税仕入れから除外される「給与等を対価とする役務の提供」に該当するか否かの基準ではないが、その判断に当たっても参考となる基準といえる。

3
本件各作業員は、A社の他の従業員と同様、代替性が認められていなかったこと、本件各作業員には、完成すべき作業の定めはなく、依頼した作業が完成しなかったとしても、作業日数に応じた報酬が支払われていたこと、A社と本件各作業員との間で契約書は交わされておらず、危険負担についての定めもなかったこと、作業員が材料を購入することはなかったこと等が認められる。

4
本件各作業員は、作業日、作業内容や作業時間を自由に決めることはなく、A社が作成する出面表に従って作業先を割り振られ、そこで、受注先の現場監督、A社代表者又は職長の指示に従って作業を行っていた。これは、本件各作業員がA社の従業員であった時期のそれと同機であり、「給与等」該当性を肯定する重要な要素となる。

5
以上の事情を総合すると、本件支出金は、A社から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的にされる労務又は役務の提供の対価として支給されたものであり、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付というべきであるから、所得税法28条1項の「給与等」に該当する。

(税法データベース編集室市野瀬留子)
JUSTAX第333号(令和3年4月10日号)/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部干151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷5-10-9更生保護会館/TEL(03)3350-6300FAX (03)3350-4628



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