マレーシアの不動産収入
マレーシアの不動産収入
日本に住む日本人がマレーシアに不動産投資をして、賃貸料の収入がある場合の課税関係について検討しました。(會澤税理士)
日本における課税関係
・投資者は所得税法上、日本の「居住者」に該当し、全世界所得に対し課税されることになる。
・マレーシアで課税された所得税については、外国税額控除の適用を受けることができる。(マレーシアで税金を徴収されたことを証明する書類が必要。)
マレーシアにおける課税関係
課税庁 : Inland Revenue Boad
所得税法 : Income Tax Act 1967(ITA)
・この投資者は、マレーシアに182日以上滞在していないので、「非居住者」に該当する。(II-7)
・非居住者は、本人が直接か代理人を通して税務申告を行う。(IV-70)
・マレーシアでは、居住者・非居住者ともに、不動産の賃貸収入につき、課税される。(II-4 (d))
非居住者の一定の所得は、源泉徴収の対象となっている、不動産の賃貸料は、この源泉の対象になっていない。(Public Ruling NO.1/2010)
・所得計算は暦年で行い、4月30日までに確定申告を行なわなくてはならない。(III-70)
・不動産所得の計算方法はPublic Ruling 4/2011に規定されている。
賃貸して得た収入から固定資産税や管理費、修繕積立金などを控除して計算され、それに一定の税率を掛けて税額を算出する。
不動産を譲渡した場合
日本での課税関係
・賃貸収入同様に全世界所得として課税される。
マレーシアでの課税関係:
原則:キャピタルゲインは非課税
例外:不動産譲渡益税(分離課税と思われる?)
・不動産保有期間5年以内の譲渡益に対し、税率5%で課税(個人・法人を
問わず、居住・非居住の区分も問わない。)5年超は、非課税。
・不動産の取得者は、現金による対価又は譲渡対価の2%のうち少ない方
の金額を留保して、譲渡日より60日以内に税務署へ納付する。
・申告期限は、譲渡日より60日以内。
日本とマレーシアの租税条約
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_52.html
・不動産所得については、不動産所在地国で課税できる旨規定(6条)
・土地等の譲渡所得については、不動産所在地国で課税できる旨規定(13条)
外国税額控除
外税控除の限度額
外税控除は、次の算式によって計算した限度額の範囲で税額控除する。
限度額 =その年の所得税額×その年分の国外所得(分子)/その年分の総所得(分母
適用時期
原則として、申告、賦課決定等の手続きにより外国所得税について具体的に納付すべき租税債務が確定した日の属する年分で適用する。
<例>
H23年 H24年 H25年
マレーシア 賃貸料所得 申告(確定)
日本 外税控除申告
解説
・マレーシアでは、H23年分の所得をH24年4月までに申告する。
・マレーシアで課された所得税の日本での外税控除は、租税債務が確定したH24年分の確定申告で行う。
・H24年分で控除できる限度額は、総所得に対する国外所得の割合となる。
・もしH24年分に国外所得がない場合や総所得がマイナスとなった場合、算式に当てはめた限度額はゼロとなり、H23年に課された外国税額は、控除できないことになる。
・これを避けるため、H23年分の申告において、外国税額限度額の計算を行い、控除余裕額の繰越を行うことにより、翌年以降(3年間)で税額控除ができるようにしておく必要がある。
・具体的には、国税庁のHPより「外国税額控除に関する明細書」をアウトプットし、確定申告書に添付する。