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2022-02-21 相続税の債務控除 「確実と認められる債務」

2022-02-10 相続税の債務控除 「確実と認められる債務」

債務控除の対象となる「確実と認められるもの」 該当性
混同により消滅した債務の評価

被相続人の債務が、その債権者である相続人に承継されたときは、その償務は消滅します(民法520)。
今回は、この混同を利用した相続税対策として行われた建物売買契約に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務について、債務控除の対象となる「確実と認められるもの」に該当するか否かが争われた裁決をご紹介します。(令平日3年6月17日公表裁決・一部取消し・TAINSコード。J123-3-08)

く事案の概要>

A (被相続人)の相続開始前、Aの長男(審査請求人)は、税理士法人Mからの財産承継に係る提案(本件各提案)に基づき、Aに、その所有する建物(本件建物)を代金43,020,000円(本件代金)で譲渡し、同様に、Aの二男も、その所有する建物(別件建物)を代金127,800,000円(別件代金)で譲渡しました。

その後、平成26年12月、Aの相続が開始し、遺産分割により、長男は、本件建物とその敷地及び準消費貸借に基づく債務42,482,250円(本件債務)を承継し、二男は、別件建物とその敷地及び準消費貸借に基づく債務126,202,500円(別件債務)を承継しました。

本件は、審査請求人が、Aの相続税の申告において債務控除の対象とした本件債務及び別件債務について、原処分庁が、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には該当せず、全額が債務控除の対象とはならないとして、相続税の更正処分等を行ったことから、審査請求人が、その取消しを求めた事案です(二男の事案は、J123-3-09参照)。

く審判所の判断>

審判所では、次のとおり判断し、本件債務及び別件債務のうち、本件建物及び別件建物の経済的価値に相当する部分は、「確実と認められるもの」に該当するものの、本件建物及び別件建物の経済的価値を超える部分については、「確実と認められるもの」には該当しないとして、債務控除の一部を認容しました。

① 本件各提案の財産承継とは、本件建物及び別件建物について、各通達評価額に大きな上積みをして本件代金及び別件代金を定め、これを準消費貸借としたまま、相続開始後の遺産分割において、審査請求人に本件建物及び本件債務を、二男に別件建物及び別件債務をそれぞれ承継させて、混同により本件債務及び別件債務を消滅させるというものであり、実際に、遺産分割によって実現される結果となっている。

② 本件代金及び別件代金は、適正な時価(固定資産税評価額)として評価決定された各通達評価額に大きな上積みをしたものであるから、本件建物及び別件建物の経済的価値を大きく超えるものと推認される。

③ 相続税が財産の無償取得によって生じた経済的価値の増加に対して課せられる租税であることから、相続税法の債務控除は、相続人が相続により負担することとなる債務の現に有する経済的価値を客観的に評価する趣旨のものと解される。そうすると、本件債務及び別件債務のうち、本件建物及び別件建物の経済的価値を大きく超えて上積みした部分は、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎないものであるから、相続開始日における消極的経済価値を示すものとはいえない。

④ 一方で、審査請求人及び二男は、相続によりそれぞれ本件建物及び別件建物を取得しながら、本件代金及び別件代金のうち本件建物及び別件建物の経済的価値に見合う部分の債権も失うべきこととなり、実際にこれらを失う結果となっている。それにもかかわらず、審査請求人及び二男が、相続により本件建物及び別件建物を取得して経済的価値が増加したと認めることは困難であるから、上記各部分に係る本件債務及び別件債務は、相続開始日における消極的経済価値を示すものと認めるのが相当である。

⑤ したがって、相続開始日の現況における本件債務及び別件債務の消極的経済価値は、各通達評価額をもって把握するのが相当である。よって、確実と認められる本件債務及び別件債務の額は、本件建物の通達評価額に相当する額i20,726,840円及び別件建物の通達評価額に相当する額40,738,138円となる。

JUSTAX第343号(令和4年2月10日号) 
編集・発行 東京税理士会データ通信協同組会


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