さまざまな分野の税と会計の問題についてのご相談承ります。

2022-05-10 相続財産評価における評価通達第6項の適用の是非

2022-05-10 相続財産評価における評価通達第6項の適用の是非

[#j4dd95f2]

節税目的で取得した不動産の評価について、財産評価基本通達(評価通達)6項(この通達の定めにより難い場合の評価)の適用の是非が争われていた事件について、初めて最高裁の判断が示されましたので、ご紹介します。(令和4年4月19日最高裁・棄却・確定・TAINSコード:Z888-2406)

<事案の概要>

 被相続人(平成24年6月17日、94歳で死亡)は、平成21年に甲不動産及び乙不動産(各不動産)を合計13億8700万円で購入し、その際、信託銀行等から合計10億5500万円の借入れをしました。この事案は、共同相続人である上告人らが、各不動産について、各通達評価額(合計3億3370万円余)に基づき相続税の申告をしたところ、札幌南税務署長が、評価通達6項を適用し、各鑑定評価額(合計12億7300万円)に基づき各更正処分等を行ったため、これらの取消しを求めるものです。

 原審(令和2年6月24日東京高裁・Z888-2346)は、各不動産の価額については、評価通達の定める方法により評価すると実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果を招来すると認められるから、他の合理的な方法によって評価することが許されると判断した上で、各鑑定評価額は各不動産の時価 (客観的な交換価値)であると認められるから、各更正処分等は適法であるとしました。

<裁判所の判断>

 最高裁では、次のとおり、評価通達に基づき評価すると、実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合は、鑑定評価額に基づき評価しても平等原則に違反しないと判断して、原判決を是認しました。
①  課税庁が評価通達に従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも、財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。

② 各通達評価額と各鑑定評価額との間には大きなかい離があるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。もっとも、本件購入・借入れが行われなければ課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額がO円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被 相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。


②  そうすると、各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。したがって、各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額(各鑑定評価額)によるものとすることが上記の平等原則に違反するということはできない。

(JUSTAX第346号、 令和4年5月1日号)
編集発行 東京税理士会データ通信協同組合広報部





戻る

powered by QHM 6.0.2 haik
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional