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2022-07-10 不動産の低額譲渡/みなし譲渡とみなし贈与

不動産の低額譲渡/みなし譲渡とみなし贈与

所得税法59条1項2号は、「著しく低い価額の対価として政令で定める額」と規定していますが、相続税法9条は、政令においても通達においても「著しく低い価額の対価」の具体的な基準は定められていません。

今回は、不動産の評価とそれに伴う所得税、相続税、法人税に及ぼす影響について争った事例をご紹介します。
(令和2年10月23日東京地裁・一部認容・棄却・控訴・TAINSコード:Z270-13473)

<事案の概要>

本件は、亡Dの相続人である原告A及び原告B並びに亡Dから不動産の謙渡を受けた原告C社が、当該譲渡は低額譲渡であったとして、飯田税務署長から、所得税、相続税、法人税等につきそれぞれ更正処分等を受けたことから、処分の取消しを求めた事案である。亡Dは、原告C社に対し、不動産を1億2000万円で譲渡したが、飯田税務署長は、不動産の価額は4億840万円と評価している。

く東京地裁の判断>

1 不動産の評価
本件各不動産の評価方法は、評価通達に定める路線価方式に基づいて算出された評価額を0.8で割り戻し、これに時点修正を加えて評価額を算定する方式(評価通達を準用した方法)によるのが相当である。

また、本件各不動産を7評価単位に区分し、その評価単位ごとに評価するのが相当である。大規模店舗の敷地に利用されているスーパー部分のうち、甲部分について提出されていた無償返還届出書の効力は本件譲渡時点においても存続しており、甲部分に関する借地権価額は0円と評価される。

そうすると、本件各不動産の譲渡時点における時価は2億3489万円余となる。

2 みなし譲渡(所得税法59条1項2号)適用の可否
本件譲渡に係る売買代金1億2000万円は、本件各不動産の評価額2億3489万円余の2分の1(1億1744万円余)に満たない金額とはいえないから、本件譲渡に所得税法59条1項2号を適用することはできない。

3 みなし贈与(相基通9-2)適用の可否
相続税法9条の関係においては、本件時価(公示価格水準)の80%程度あれば、「著しく低い価額の対価」とはいえないと解されるが、本件譲渡の対側1億2000万円は不動産評価額の約51.1 %であるから、所得税法とは異なり、「著しく低い価額の対価」で利益を受けさせたものに当たると解される。
本件譲渡により、1株当たりの増加益は32万円余であり、原告Bが40株保有しているのであるから、増加益は合計1311万円余となり、この額が、原告Bが亡Dから贈与により取得したものとみなして相続税の課税価額に加算すべき額となる。

4 原告C社の受贈益
本件譲渡は、内国法人である原告C社が、不動産の時価である2億3489万円余に比して低い1億2000万円で各不動産の譲渡を受けたものであるから、差額の1億1489万円余については亡Dから実質的に無償で経済的利益の供与を受けたものとして、原告C社に受贈益が発生する。これを本件事業年度の益金に加算すべきである。

JUSTAX第348号(令和4年7月10日号)/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部



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