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2016-09-28 遺留分減殺請求訴訟における和解金の所得区分

2016-09-28 遺留分減殺請求訴訟における和解金の所得区分


東京税理士会データ通信協同組合情報事業資料

所得区分/遺留分減殺請求訴訟等における和解金
紛争解決金に該当するとして一時所得と判断

今回は、長男が、亡母の全財産を相続した四男に対し提起した遺留分減殺請求訴訟等における和解により受領した金員の所得区分について争った事例をご紹介します(還付金の充当処分については省略)。
(平成27年7月17日非公開裁決・一部取消し・FO-1-575)

事案の概要

本件は、請求人が、亡母の相続に関し実弟に対して提起した遺留分減殺請求訴訟及び果実返還請求訴訟(本件訴訟)において成立した訴訟上の和解に基づき、実弟から金員を受領したところ、原処分庁が、当該金員は相続財産である賃貸マンションの賃料収入の一部であるから不動産所得に該当するとして、平成24年分等所得税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該金員は不動産所得に該当せず、相続税の対象であるとして、原処分の取消しを求めた事案です。

国税不服審判所の判断

1 和解金(本件金員)の法的性質
本件訴訟は、相続財産の範囲、遺留分の価額、請求人に対する貸金債権の存否など争点、が多岐にわたるとともに、当事者の主張が先鋭に対立しており、受理期間も既に1年半以上に及んでいた。

そのような中で、本件金員は、裁判所から提示され、当事者においても受諾した和解案の金額にできるだけ近い金額となるように、和解条項の調整を行う中で、多目的な積算の内訳を付して算出した金額であることがうかがわれる。

そうであるとすれば、本件和解条項は、いずれも、実弟から請求人に支払われた本件金員に積算の内訳を付するために、名目上掲げられたものにすぎないものと解するのが相当である。

そうすると、本件金員は、請求人と実弟との間に存する本件相続に関する一切の紛争を解決するための、和解金ないし解決金の性質を有するものであると認めるのが相当である。


2 マンション及びその賃料債権の帰属
誇求人の亡母は、所有財産の全部を包括して実弟に相続させる旨の遺言をしており、マンションを含む相続財産は、相続により実弟に承継されたものと認められる。

本件和解により、実弟が本件金負を期限に遅滞なく支払ったときは、請求人は持分を主張しない旨合意され、実際に本件金員が支払われたことに照らせば、遺留分減殺請求によって、遺言及び相続によるマンションの承継の効力は左右されることはなく、請求人はマンションの持分を有したことはなく、民法1036条(受贈者による果実の返還)所定の果実としてマンションの賃料債権を取得することもなかったものと見るのが相当である。


3 本件金員の所得区分
本件金員は、マンションの賃料収入に係る果実返還金ではないから不動産所得とは認められない。また、本件金員は、遺留分減殺請求に対する価額弁償金等として支払われたものではないから、これを相続財産と見ることはできないロ本件金員は一時所得と認めるのが相当である。

一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるところ、本件金員は、平成25年7月に請求人に支払われたものであることから、これを平成25年分の一時所得と認めるのが相当である。

以上によれば、更正処分等は所得区分及び帰属年分を誤っていることから違法である。
(税法データベース編集室市野瀬音子)



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JUUSTAX第278号(平成28年9月10日号l/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部
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