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2017-06-17 小規模宅地等の特例適用、相続人全員の選択同意書

2017-06-17 小規模宅地等の特例適用、相続人全員の選択同意書


小規模宅地等の特例適用の手続要件

特例対象宅地等を取得した相続人全員の選択同意書の有無

小規模宅地等の特例(措置法69条の4)の適用を受ける場合は、特例対象宅地等を取得した全ての相続人の選択同意書を相続税申告書に添付することが必要です。今回は、特例対象宅地等について、一部は原告が遺言により取得し、その他は未分割財産であったときの選択同意書の添付の有無について争われた裁判例をご紹介します。(平成28年7月22日東京地裁・棄却・控訴・TAINSコードZ888-2017)

〈事案の概要>

原告の母(被相続人)の相続財産には、R区土地の共有持分(R区土地相続分)及びR区土地上に存する建物の共有持分(R区建物相続分)並びにQ市土地の共有持分(Q市土地相続分)が含まれていました。
原告は、相続させる旨の遺言により、原告が経営する診療所の土地建物であるR区土地相続分及びR区建物相続分を全て取得しましたが、相続税の申告期限の時点において、相続財産のうち、分割財産はR区土地相続分及びR区建物相続分のみであり、賃貸用共同住宅の敷地であるQ市土地相続分は未分割財産でした。
この事案は、原告が、R区土地相続分について、その母と生計をーにしていた原告の事業の用に供されていた宅地等であるとして、措置法(平成22年法律第6号による改正前のもの。)6 9条の4第1項に規定する小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(本件特例)の適用があるものとして相続税申告書を提出したところ、小石川税務署長から、本件特例の適用は認められないなどとして、更正処分等を受けたことから、その取消しを求めて争われたものです。

く裁判所の判断>

東京地裁は、次のとおり判断し、本件特例は適用できないと判断し、原告の請求を棄却しました。

① 措置法69条の4第1項は、相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格を計算する際の特例として定められたものであるところ、相続税の計算に当たっては、同ーの被相続人に係る全ての相続人等に係る相続税の課税価絡(相続税法11条の2) に相当する金額の合計額を基にするものとしているのであって、課税価絡の算定の基礎となる「相続文は遺贈により取得した財産Jには、未分割財産が含まれるものというべきであるから、措置法69条の4第l項の「相続又は遺贈により取得した財産」についても、未分割財産が含まれるものというべきである。

② R区土地相続分及びQ市土地相続分は、被棺続人又は被相続人と生計をーにしていたその長男である原告の事業の用に供されていた宅地等であって、措置法69条の4第1項にいう財務省令(措置法施行規則23条の2第l項)で定める建物の敷地の用に供されているもので政令(措置法施行令40条の2第2項)で定めるものに該当することは明らかであり、Q市土地相続分のような未分割財産も特例対象宅地等に含まれるのであるから、R区土地相続分及びQ市土地相続分は、いずれも特例対象宅地等に該当する。

③ そして、Q市土地相続分は、相続税の申告期限の時点において未分割財産であり、被相続人の共同相続人である相続人ら(原告及びその姉妹3人)の共有に属していたことになるから、相続により、R区土地相続分及びQ市土地相続分から成る特例対象宅地等を取得したのは、相続人ら全員ということになる。
したがって、本件相続において、特例対象宅地等の選択をして本件特例の適用を受けるためには、特例対象宅地等を取得した全ての相続人らの選択同意書を相続税の申告書に添付してしなければならないということになる(措置法施行令40条の2第3項本文)。

④原告は、相続税の申告において、相続人らの選択同意書(なお、申告書の第11・11の2表の付表1の「特例の対象となる財産を取得したすべての人の氏名J繍には、原告の氏名のみが記載されている。)を添付していないのであるから、R区土地相続分について、本件特例を適用することはできない。


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