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2020-01-12 TPR事件/組織再編成に係る行為又は計算の否認

2020-01-12 TPR事件/組織再編成に係る行為又は計算の否認


TPR事件/組織再編成に係る行為又は計算の否認

  • 適格合併における未処理欠損金額の引継ぎの可否 -
    今回は、組織再編成に係る個別的否認規定である法人税法57条3項の適用が排除される適格合併である、特定資本関係5年超要件を満たす適格合併につき、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」として、一般的否認規定である同法132条の2が適用された判決をご紹介します。
    (令和元年6月27日東京地裁・棄却・控訴(棄却) ・TAINSコード:Z888-2251)

事案の概要

この事案は、自動車部品等の製造販売を主たる目的とする原告が、その完全子会社を被合併法人とする適格合併(本件合併)を行い、子会社が有していた未処理欠損金額を法人税法57条《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》2項の適用により原告の欠損金額とみなして損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、上記未処理欠損金額を原告の損金の額に算入することは原告の法人税の負担を不当に減少させる結果となるとして、同法132条の2《組織再編成に係る行為又は計算の否認》の適用により更正処分等を受けたことから争われたものです。

裁判所の判断

東京地裁では、平成28年2月29日最高裁の不当性要件の判断基準を踏まえ、次のとおり判断し、未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなして損金の額に算入する計算を否認することができるとしました。
① 法人税法は、特定資本関係5年超要件(法法57③)を満たす適格合併についても、同法132条の2が適用されることを予定しているものと解するのが相当である。

② 組織再編税制は、組織再編成による資産の移転を個別の資産の売買取引と区別するために、資産の移転が独立した事業単位で行われること及び組織再編成後も移転した事業が継続することを想定しているものと解される。そして、組織再編成税制は、完全支配関係がある法人間の合併についても、他の2類型の合併(支配関係がある場合の合併や共同事業を営むための合併)と同様、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を想定しているものと解される。そうすると、法人税法57条2項についても、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を想定して、被合併法人の有する未処理欠損金額の合併法人への引継ぎという租税法上の効果を認めたものと解される。

③ 本件合併とともに新子会社の設立、子会社の全従業員を新子会社に転籍、本件合併により承継した棚卸資産等及び製造設備等を新子会社に譲渡及び賃貸借が行われたことによって、実態としては、子会社の営んでいた事業(自動二輪車用アルミホイール製造事業)はほぼ変化のないまま新子会社に引き継がれ、原告は、子会社の有していた未処理欠損金額のみを同社から引き継いだに等しいものということができる。

④ そうすると、本件合併は、形式的には適格合併の要件を満たすものの、組織再編税制が通常想定している移転資産等に対する支配の継続、言い換えれば、事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえず、適格合併において通常想定されていない手順や方法に基づくもので、かつ、実態とはかい離した形式を作出するものであり、不自然なものというべきである。

⑤ それに加えて、未処理欠損金額の引継ぎによって原告の法人税の負担を減少させること以外に本件合併を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事情があったとは認められないことからすれば、本件合併は、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したもので、あって、法人税法57条2項の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるものというべきである。

⑥ 本件合併は、組織再編税制に係る上記規定を租税回避の手段として濫用することによって法人税の負担を減少させるものとして、法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものJに当たるということができる。

JUSTAX第318号(令和2年1月10日号)/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部


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