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2021-05-21 評価通達により難い「特別の事情」の有無

2021-05-21 評価通達により難い「特別の事情」の有無

多額の宅地造成費等を必要とする市街地農地の評価
不動産の時価は、一般に財産評価基本通達(評価通達)に基づき評価されますが、評価通達により難い「特別の事情Jがある場合は、評価通達の定めと異なる評価方法(鑑定評価等)により評価することとなります。
今回は、市街地農地の評価につき、評価通達により難い「特別の事情Jがあるか否かが争われた判決をご紹介します。
(令和2年10月9日東京地裁・全部取消し・確定・TAINSコードZ888-2344)

く事案の概要>

原告は、亡甲の相続(平成27年1月相続開始)により、A市に所在する本件土地(栗畑、1461㎡)を取得しました。この事案は、原告が、本件土地の価額につき、評価通達に基づく評側額により修正申告をするとともに、評価通達により難い特別の事情があるとして、鑑定評価等に基づく評価額(57 1万円)により更正の請求をしたところ、荻窪税務署長が、それを認めず、他の部分のみ認める減額更正処分を行ったことから、その更正処分のうち更正の請求に係る額を超える部分の取消しを求める事案です。

<裁判所の判断>

東京地裁では、次のとおり判断し、評価通達により難い特別の事情があると認められるのに、評価通達に基づき行った更正処分は違法であるとして、原告の請求を認容しました。


評価対象の不動産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該不動産の相続税の課税価絡がその評価方法に従って決定された場合には、課税価絡は、評価通達により難い特別の事情の存しない限り、相続開始時における当該不動産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当である。


本件土地は、市街化区域内に所在する農地であり、宅地であるとした場合には評価通達24-4 ≪広大地の評価≫にいう広大地に該当し、A市長に対し買取りの申出をすることができる生産緑地であるから、評価通達40 -2 ((広大な市街地農地等の評価》、24-4、40-3≪生産緑地の評価》が適用され、評価通達に基ついて評価した場合の評価額は2172万1993円である。


本件土地を宅地に転用するのに、評価通達40-2や24-4の定めが想定する程度を著しく超える宅地造成費等(建築基準法上の道路まで通路を開設するのに必要な費用を含む。)を要するような場合には、評価通達により難い特別の事情があると解される。


本件土地は、幅員約1. 82mの農道に西側で接しているが、建築基準法等の接道義務を満たしていない無道路地で、そのままでは建築物を建築することはできない。本件土地を宅地に転用するには、北側l約80mの道路に達するまで、A市の定めにより西側農道を幅員6mに拡幅して開発を行う必要がある。


本件土地を評価通達に基づき評価した場合には、広大地補正として、2052万6444円(評価通達40-3による生産緑地補正前の金額)を減価して評価していることになる。本件土地を実際に宅地開発するために必要な宅地造成費等が、この減価額(2052万6444円)を著しく超えるものであれば、本件土地には「評価通達により難い特別の事情」があると解される。


本件土地を宅地として造成するのに必要な費用は、道路提供土地買取価格1473万5729円、造成工事費3570万6960円、倉庫取壊費用14万2922円の合計5058万5611円となる。


以上によれば、本件土地は、宅地転用に当たり、評価通達40-2や24-4の定めが想定する2052万6444円程度を著しく超える、5058万5611円(評価通達ベース額である80%に引き直して4046万7488円)の宅地造成費等を要するのであるから、評価通達により難い特別の事情があると認めるのが相当である。
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JUSTAX第334号(令和3年5月10日号)/編集・発行東京税理士会データ通信協同組合・広報部



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